みなさま。たいへん長らくお待たせいたしました。50女のオキエです。ただいまから、宝塚歌劇団・花組・ポーの一族、二幕についてお語り致します。ごゆっくりお読みください。
こんな感じでトップスターのご挨拶アナウンスから始まる宝塚の舞台。宝塚ホテルのあとに向かったのは、そう、宝塚歌劇団。花組、ポーの一族!!
人間の血を吸って永遠の命を生きるバンパネラのお話です。
前にも書きましたが、前売りチケットを取り損ねたんです。ソールドアウトです。担組じゃないし、ご贔屓ののぞ様も珠様も出演されるわけではないので、最初はもうあきらめようと思っていました。
でも。50女の「美しいものを見たい。」欲求が、どれほどすさまじいものか、私は身をもって経験しました。
こないだ、同年代の友人と「50になったくらいから今まで全く興味のなかったキラキラしたものに妙に惹かれるようになった。これはきっと自分の中から失われていくキラキラを補充しようとしているのかもしれない。」という共通認識について話をしていました。ある意味、私たちこそ人のエナジーを吸い取って生きるバンパネラなのかもしれません。
さて。
宝塚駅を降りてすぐ、目に飛び込んでくるのは100周年を記念して建てられたこちらの像。そしてショッピングセンターを抜けると見えてくるのは花乃みち。この道をまっすぐ行けば、劇場に到着です。
正面入り口を超えてもうしばらく歩けば、楽屋入り口があります。そこからタカラジェンヌさんは入っていきますので、ジェンヌさんの入り時間にはファンでいっぱいになります。
ジェンヌさん個人のファンクラブに入れば、ここでジェンヌさんに直接お手紙やプレゼントを渡すことができます。望めば近くに行ける、そういった魅力も舞台ならでは。
しかし役者さん達は、どれだけチケットをさばけるか、どれだけファンをつけているか、なども大切なお仕事になっていて、現実は客商売としてのシビアな側面もあります。けれども、「清く正しく美しく」の教えを体現し、常に妖精(フェアリー)であり続けよう、その姿をファンに見せ続けよう、とする若い娘さんたちの涙ぐましい努力には畏怖の念さえわいてきます。
そこをちゃんとファンたちも受け止めていて、だからこそ「ファン」としての役割を生きるため、しっかりときめいて憧れて酔いしれてうっとりして、チャンスがあれば営業までしてしまうのかもしれません。
ジェンヌさんたちが退団して妖精から普通の役者さんに変わっていかれるさまは、どこか寂しく、けれども嬉しく、そして美しく、見ていてほっこり幸せな気持ちになれたりするものです。
変わって劇場の中。観劇しなくても入れるスペースにはチケットセンターはもちろん、フードコート、おみやげもの屋さん、グッヅコーナー、カフェ、テラス、衣装体験コーナーなどいろいろあってそれだけでもけっこう楽しめます。
そして。いざ、客席へ。
この日、オキエは人生初の「立ち見」に挑戦したのです。見え方はこんな感じ。
客席が満員御礼の場合、140枚の立ち見券(2,500円)が発売されます。
宝塚ホテルに行く前、販売開始10時を30分すぎたころに到着したオキエの番号は63番でした。立ち見の2列目。
オキエが子供のころは少女漫画全盛期。なかよし派やりぼん派にわかれてみたり、マーガレット派や少女フレンド派がいたり、ちょっと個性的な子は花とゆめを静かに読んでいたり、少女漫画にもいろいろな流派がありました。
私は元気で明るいヒロイン物が好き。高階良子先生の描くミステリー物や、異色だった魔夜峰央先生の作品も夢中で読んだりもしたけど、結局はちょっとおっちょこちょいのペチャパイヒロイン物にはまる。そんな私のアンテナに萩尾望都先生の作品はひっかかってこなかった。
好きな原作でもない、担組でも贔屓が出演するわけでもない。なのに立ち見までして見たいと思ったのは、ひとえに明日海りおさん率いる花組の皆さんの美しさ、かっこよさを一目この目で見ておきたい、という美への執念でした。
美しい。
本当に美しすぎる。
舞台上で繰り広げられる美の祭典に、感嘆がもれるばかり。
とはいえ本当に体力のないうえに風邪気味のオキエ。2列目なので、もたれる柵も無く、途中なんどもくじけそうになりました。小学校の朝礼で目の前がまっ黄色になってぶったおれた記憶がよみがえります。ふくらはぎもぷるぷるしてきます。更年期特有の油汗があとからあとから湧いて出ます。
ついに、ふらふらと後ずさりして、しゃがんで頭を下げました。
その次の瞬間
ジャン・クリフォード様がホテル(舞台上)に到着されてしまったのです。
チナツ、キター!!!
その刹那オペラグラスを握りしめ私は飛び上がり、その後無事に観劇を終えることが出来ました。
鳳月杏ちゃん、通称ちなつ。少女漫画からそのまま飛び出してきたような等身の罪なイケメン。鋭く冷たい刺すようなまなざしを向けた後、天使のような破顔を見せる無垢な天性のプレイボーイ。それはずるいで。何度つぶやいたことか。(注意・芸風の話です)
鳳月 杏(An Hozuki) | 宝塚歌劇公式ホームページ
悲哀に満ちた物語のラストシーン、ふたりのバンパネラが舞台上で微笑むその悲しい美しさに、はらはら涙がこぼれました。みりりん、れいちゃん、どんだけ綺麗やねん。
「眼福」
眼福とは、珍しいもの、美しいものなどを見ることのできた幸せ。目の保養。「
まさにこの言葉をそのまま体験することのできた公演でした。
そして、美への執念が体調不良をも押し流すエネルギーになりえることも、実感しました。
人は美味しいものを食べたいのと同じように、美しいものを見たいように作られているのかも。そしてそこからもバンパネラのようにエナジーを吸い込んで、また生きる力に変えることができるのかもしれない。ありがたく座れた帰りの電車の中で、そんなことを考えていました。
さて。
もうどうでもいいような気がしてきた本日の出費合計。
交通費が往復1,520円、宝塚ホテルのランチ代が1,440円。
立ち見の観劇代、2,500円、劇場で買ったペットボトルの紅茶150円。
本日の出費、5,610円。
「兵庫県まで行って大正ロマンを感じながらクラシックホテルでランチして、とっても美しくて悲しいお芝居を観てきたのよ。」と言われて、まさかこの金額で過ごしてきているとは誰も思うまい。その言葉の奥に秘められた涙ぐましい努力というものを語らないのが粋というもの(思い切り書いてるやん)、贅沢と節約の探求はまだまだ楽しく続いていくのですわよオホホ。